ピエロのなげき

あーあ、もっと足が長かったらいいのになぁ。
さいしょピエロは自信なさそうな顔をしていました。
作者は小学4年生の女の子。油絵。
せっかくえらんであげたのだから
そんな顔をしないでよ。
いいこと考えた。わたしがえがおにしてあげます。
じっとしていてね。

ほっぺたのところに赤い絵の具をのせて
筆さきできゅっきゅっ。
まぶたのところにも
きゅっ。
かがみから三歩、はなれて
おたしかめくださーい。

あれれ、えがおになっている。
でしょ? これが油絵のマジックです。
でもほんとうはマジックでもなんでもありません。
油絵では絵の具がかわけば
こんなふうにかさねぬりができます。

だき人形さんはこっち。
フランス製の磁器のネコくんは
ちょっとはなれて、ましょうめんをむいてね。
記念写真をとるときの緊張したようなポーズが
ぎゃくにかわいらしさにつながりました。
だき人形さんのねがいはただひとつ。
ながーいまつ毛でおねがいします。

さいごに
きいろとブルーをつかって
いちばん上の一列と
いちばん下の一列をぬりつぶしました。
赤、ピンク、白のチェックのもようが
いちだんときれいにみえます。

赤、白、青って
フランスの国旗の色なんだよ。
おきもののネコがいちはやく気がつきました。
どこかじまんげな表情です。
いちばん上の一列と
いちばん下の一列をぬりつぶしました。
赤、ピンク、白のチェックのもようが
いちだんときれいにみえます。

赤、白、青って
フランスの国旗の色なんだよ。
おきもののネコがいちはやく気がつきました。
どこかじまんげな表情です。

少年少女世界の美術館より 司馬遼太郎
少年や少女たちが、
その年齢のときから美しいものにあこがれ、
何が美しく、何が嫌悪すべきものであるかを身につけなければ、
きっと醜悪なものの中で
平然としている人生を送るにちがいない。
美の訓練は、
智恵のできた大人になってからでは遅いらしい。

油絵では水彩とちがう表現ができる。
それがすぐにできたのも
せんぱいたちの絵ができあがるまでを作者は
よくみていたのでしょう。
アトリエ10には
楽しいもの、おもしろいもの、ゆめのなかにでてきそうなもの、
ここでしか見たことのないものが、
手のとどく距離でかざられています。
はやくきみにであいたいよ、モデルにしてよ。
ピエロのそんななげきが
今回はよろこびのえがおになりました。
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