リアルではないというおもしろさ

ほんものそっくり(リアル)ばかりが絵ではありません。
ほんものそっくりではないというふしぎ。
だったらそれはニセモノ?
そう言いきっていいのなら
はなしはかんたんなのですが・・。
作者は小学6年生の女の子。油彩。
もううんざりだ。
こんなどうぶつがいないというなら
そのしょうこをみせてくれ。

作者ではありません。
このいきものがそう主張しています。
作者のあたまのなかにいるだけなんていったら
作者に失礼だ。

このいきものがそうさけんでいます。
このどうぶつたちはじっさいにいるのか(リアル)、
それとも頭のなかだけでつくりあげたものなのか(アンリアル )。

メキシコのオアハカでつくられるこうした木のどうぶつは、
幻想的な色彩やかたちで
アトリエ10のこどもたちにも人気があります。

作者はそうした幻想のどうぶつと
そうではないものを
おなじ平面で
おなじ筆のタッチでえがいています。
たとえば背景。
土にはでこぼこがあったり
木の根っこや背の低い植物があって、
南の国の乾燥した風土をかんじさせます。(リアル)

トラとウサギはどうでしょう。
トラにまゆげがあるなんて・・
みたことがないのでアンリアル。
ウサギはわたしたちが知っているすがたなので
想像上の動物ではないからリアル。

このふたつが対角線上で
リアルなものとアンリアルなものをはさみこんでいる。
最初に目にしたときに
あれっ!と思ってしまうのはそのせいです。
この意外性に作者はおもしろさを
みつけだしました。
常識的な考えでかたまっていると
この絵のおもしろさはすぐにはわかりません。
低学年のこどもほど
この絵のおもしろさを一瞬でみぬいてくれました。

少年少女世界の美術館より 司馬遼太郎
少年や少女たちが、
その年齢のときから美しいものにあこがれ、
何が美しく、何が嫌悪すべきものであるかを身につけなければ、
きっと醜悪なものの中で
平然としている人生を送るにちがいない。
美の訓練は、
智恵のできた大人になってからでは遅いらしい。

この絵をみていると
ほんものそっくりにえがけている!
と感動するだけが絵のみかたではない
ということがわかってきます。
作者にはもののとらえかたに
独特の感性があり
自分で自分の世界をひろげていくことのできる
ちからがあることを
この作品でもみせてくれました。


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