雨の日にふってくるもの

雨の日にふってくるものは
雨いがいにはないとおもうんですが。
ええ、わたしもそうおもいます。でも・・。
作者は小学5年生の女の子。油絵。

女の子がふってくるなんてきいたことがないなぁ。
ストーンとおちてくるの?
いいえ、
ゆっくり、ゆっくりだそうです。

あっ、あれじゃないですか。

夜空のようにぬりつぶしたキャンバス。
えのぐのつぶつぶが星空とはちがって
計算されてならべられています。

色とかたちのバランスだけで
しずかで美しい作品をつくりたい。
なんどかぬりなおすうちに
めざす方向がはっきりと見えてきました。
いま目のまえにあるのは
横にひろがっている平面です。
女の子をえがきたすと、
平面はいきなりかべとなって
目のまえに垂直にひろがりました。

①赤いレインコートだけで女の子とわかる。
②レインブーツをはかせただけで雨だとわかる。
こまかな雨粒、
ぬれはじめたビルのかべ。
それ以上の説明で
絵をみるひとの想像力をじゃましてはいけない。
このふしぎな絵のなかで
女の子の存在は
小さなポエジーをうみだしてくれるはずだ。

少年少女世界の美術館より 司馬遼太郎
少年や少女たちが、
その年齢のときから美しいものにあこがれ、
何が美しく、何が嫌悪すべきものであるかを身につけなければ、
きっと醜悪なものの中で
平然としている人生を送るにちがいない。
美の訓練は、
智恵のできた大人になってからでは遅いらしい。

油絵なので時間がかかりましたが、
それだけ自由に
絵とそれをみるひとの想像力について
考えることができました。
個性的な作者の
その個性がきれいに表現された
とても印象にのこる作品になりました。

スポンサーサイト