はばたく白鳥

白鳥の美しさは
いろいろあるけれど
やっぱりこれじゃないのかなぁ。
作者は小学5年生の女の子。油絵。
胸もとへと細くなっていく首の
優雅でやわらかな曲線。
この一点をきわだたせるために
ほかの部分を思いきりカットしました。

ブルーをつかうことは
最初から決めていました。
でもブルーといっても
コバルトブルー、ネイビーブルー、藍色(あいいろ)
群青(ぐんじょう)色・・とさまざまです。
パレットの上でいろいろとためし、
明るさも暗さも表現できそうな
インディゴブルーに近い、
この色をみつけました。

空からは大きくえがいた雪の結晶が
羽毛のようにゆっくりと
まいおりてきます。

白鳥は白。
そう思って純白でぬってみると
動物らしい体温がまったく感じられない。
動物をえがくおもしろさは
こんなところにもあります。

絵を見る人の視線は
まずオレンジ色のくちばしにすいよせられる。
それからあたま、首へとおりて、
つばさへとひろがっていく。
単純な色の構成ですが
それぞれの色が
きちんとやくめをはたしています。

司馬遼太郎 少年少女世界の美術館より
少年や少女たちが、
その年齢のときから美しいものにあこがれ、
何が美しく、何が嫌悪すべきものであるかを身につけなければ、
きっと醜悪なものの中で
平然としている人生を送るにちがいない。
美の訓練は、
智恵のできた大人になってからでは遅いらしい。

白鳥をかいたというと
白鳥のみずうみ?
と聞きかえされたとか。
この絵とバレエの白鳥のみずうみとは
関係がありません。
でもこの絵をみて
そんな連想をしていただけたのなら
よろこんでいいことです。

バレエダンサーもこの絵の白鳥も
表現しようとしているのは
はばたこうとしている一瞬の美しさです。
自分自身を投影したような
そんな意気込みさえ感じられる
とてもすてきな絵になりました。


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