ふくろうとのおしゃべり

「なにしてるの? ねむそうだね」
「みどりのなかにいるといい気分で、ねむたくなるなぁ」
「いつもいっしょみたいだけど、きょうだいなの?」
「そうだよ」
「どこでうまれたの?」
「バリ島」
「へーえ、バリ島うまれなの? 知らなかった」
作者は小学4年生の男の 子。油絵。

「それは羽?」
「まだ小さいけれど、大きくひろげると
とってもかっこいいんだ」

「この顔がいいなあ」
「やっぱりそう思う? 作者がじょうずにかいてくれたからね。
でも、ほめてもらうと、
自分がほめられたみたいでうれしいな」

「はなれてみるとちゃんとふくろうの顔になってるよ」
「えへん、ぼくたちをモデルにしてくれただけのことはある」
「モデルってたいへんだった?」
「ぜんぜんへいき。じっとしているのってとくいだから」
「この色はいくつもの色をかさねて作者がつくったんだよね」
「そうだよ」
「気にいってる?」
「もちろん」

「作者はぼくたちをみどりいろの世界に
放したかったんだって」

「さすがだ。みどりの天国だね!」

司馬遼太郎さんは
『少年少女世界の美術館』のなかで
子どもたちのためにこんな文章を寄せています。
少年や少女たちが、
その年齢のときから美しいものにあこがれ、
何が美しく、何が嫌悪すべきものであるかを身につけなければ、
きっと醜悪なものの中で
平然としている人生を送るにちがいない。
美の訓練は、
智恵のできた大人になってからでは遅いらしい。

油絵をえがく時間のなかには
筆をつかいながら考えるという貴重な体験が
ふくまれています。
モチーフは木彫りの人形ですが、
キャンバスの上で想像力をはたらかせ
美しくて、どこかユーモアのただようとてもいい絵になりました。

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