夜のメリーゴーランド

夜中にふと窓を開けたら
こんな光景が目のまえにひろがっていた。
いつこんなものができたのだろう。
知らなかったなぁ・・でも、もしかしたら、これは夢?
目を閉じて、
もう一度、目をあけてみる。
作者は中学3年生の女子。水彩。
サーカスのテントみたいな屋根。
どこかで見たことのあるような動物たち。

目のまえにあるのは
たしかにメリーゴーランド !
でももの音ひとつしない。

白馬にうしろむきにまたがり
じっとうつむいているピエロ。
どうしたの。
そうやって無言でなにかに抗議しているの?
いいたいことがあるんだったら
いったほうがいいと思うよ。

ピエロなんでしょ、
いつものようにさかだちなんかして、
ピースサイン出して
わらわせてよ。

ピエロもどうぶつたちも
うごきをとめたままじっとしている。
まるでわたしがえがいた絵のよう・・。

たしかにわたしは「夜のメリーゴーランド」をえがいた。
でもあれはわたしの想像力が描かせたもの。
夢だよね、これは。
そうじゃなかったら・・。深呼吸をして、目をとじる。
現実をしっかりみろ、という声が
どこからかきこえたようなきがする。
こんどはゆっくりと目をあける・・。

司馬遼太郎
少年や少女たちが、
その年齢のときから美しいものにあこがれ、
何が美しく、何が嫌悪すべきものであるかを身につけなければ、
きっと醜悪なものの中で
平然としている人生を送るにちがいない。
美の訓練は、
智恵のできた大人になってからでは遅いらしい。
『少年少女世界の美術館』より

発想をピエロまではとばせても
うしろむき、というところまではなかなかもっていけません。
これが絵のメインになりました。
そのインスピレーションをすっと表現につなげたところに
作者の感性と想像力がよくあらわれています。
これは文学的感性かもしれませんね。
遠くにあった記憶をおもいださせるような
ふしぎな感覚をよびさまし、
見る人によってさまざまに鑑賞できる
すてきな作品になりました。

